経済は財政に優先する

マクロ経済運営における最も大事なテーゼは、“税は財源ではない”ではなく“経済は財政に優先する”です。

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貨幣論的観点(MMTや信用創造論)から言えば「税は【財源】ではない」ですが、会計的観点(国庫や歳出入)から言えば「税は【財源】である」というのも間違いではありません。

従って、表現されている【財源】という表面的な言葉を原理主義的に切り取って使っても、真っ当な政策論からは離れて行ってしまうのです。

【財源】の定義を「お金が生まれるもと」とするならば、税金は【財源】ではありません。純資産の日本円はすべて日銀が国債を担保に発行した信用創造なので、税金とは政府と日銀が生み出したお金を回収したものに過ぎないとなります。

他方、【財源】の定義を「政府の財布すなわち国庫」とするならば、税金で回収したお金は国庫に入るので税金は【財源】と言えます。

【財源】という言葉には、そうした両義性があるので、言葉尻を投げ合いながら議論しても、会話が成立しない、キャッチボールにならない、という不毛なことになってしまうのです。

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日本のようにデフレ傾向が長期化し、経済の需要創出が課題となっている局面では、会計的制約よりもマクロ的目標(成長・雇用・投資)を優先する姿勢が必要です。

そうした意味で、【財源】を巡る論争からは少し距離を置き、マクロ経済環境を注視しながら、【財源】を巡る神学論争より高いレイヤーにあるテーゼ、安倍晋三総理がアベノミクスを通じて展開したマクロ経済運営の極意“経済は財政に優先する”を大切にすべきなのです。

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須藤元気
「税は財源」という考えにとらわれている限り、日本は“取れるところから取る”政治から抜け出せません。政府には通貨を発行する力があります。いま本当に大切なのは、目の前の暮らしを支えることではないでしょうか。

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(アーカイブ:2025.06.10)