そもそも公立高校そして私立高校に、それぞれ何を求め、どのような高校教育を目指しているのか。
「自宅から通える所に高校をという事で望ましくない規模の学校を残していくのか、親元から離れ寮生活する事で望ましい規模の学校へ通う方がいいのか生徒目線での議論が必要です」との兵庫県議のポストを大阪維新の会の横山英幸大阪市長がリポストとしてますが、そんな公立高校を巡る基本的ビジョンもなく、かつ、府議会や市会で十分な検討とせず、政策の全国展開を急いでいるとしたら、本当にヤバいと思います。
大阪維新の会と吉村洋文大阪府知事は、完全無償化を通じた公立私立高校間の競争を促すばかりで、府立高校の校舎など設備投資を怠ってきた。今回の定員割れの実態をつぶさに見れば、それが校舎や設備の老朽化が反映されているに過ぎないことが分かります。
そもそも公立高校そして私立高校に、それぞれ何を求め、どのような高校教育を目指しているのか。そうしたビジョンを政治が示すことなく、競争だけ破壊だけでは未来をつくることはできません。
ビジョンなき改革、見識なきリーダーシップは、混乱を招くだけ。自公維合意の軌道修正は必至です。
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なお、以下は、慶應の教育経済学者、中室牧子先生の指摘。
高校無償化をするうえでもう一つ重要だと思うのが、私立高校の「参入と撤退」についての「歪み」を見直すことだ。あまり知られていないが、「人口減少の間は私立高校の新規設置の認可をしない」ことを条例で決めている自治体がある。つまり新規参入を禁止しているのだ。私はこれはおかしいと思う。何故既存の学校がいいと言い切れるのか。
そして、人口減少で定員割れした学校が「撤退」するときにどうするかについての明確なガイドラインやルールはないので、例えば経営が続けられなくなった学校に在籍している生徒をどうするのか。高校無償化によって、私立・公立間の学校間競争が厳しくなり、公立から生徒が減る可能性がある。公立高校は市場から撤退できるのか、それを決めるのは誰か。ちゃんと前もって議論しておく必要がある。
また米国で行われた教育バウチャーに関する議論では、その制度設計が非常に重要だと指摘する論文は多い。例えば、今の日本で議論されている無償化に近いユニバーサルなバウチャー制度では、「交通費」を負担するかどうかといったことで制度の成否が決まると指摘する論者もいるほどだ。授業料が無償化されても、交通費が補助されなければ、自宅から遠い学校を選択することはできない。
今や高校無償化は本予算を通過させるための政治的な駆け引きに使われ、制度設計について骨太な議論が行われていないように見受けられるが、最低でも海外で先行的に行われた制度については詳細に調べ、海外と同じ失敗を繰り返さないように、後に税金の無駄遣いだったと言われないようにしてほしいと思う。
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※ X(旧Twitter)投稿を転載
(アーカイブ:2025.03.12)