大阪方式の課題の一つが解決する。 もう一つの課題はキャップ制。

これでようやく吉村洋文知事が却下し続けてきた(大阪方式に参加しない)私立高校に通う子どもたちにも支援金がわたることになる。

大阪方式の課題の一つが解決する。

もう一つの課題はキャップ制。

キャップ制を大阪だけで維持することは不可能なので、早晩、撤回することになるだろう。

その上で、公立と私立を含めた教育サービスの提供体制の在り方という本来のテーマに焦点が移っていく。

一刻も早くキャップ制を中止し、大阪で崩れつつある教育サービスの提供体制を再構築する必要がある。

私立高の就学支援金引き上げ「45.7万円ベースに」 首相表明

X(旧Twitter)投稿を転載

***

(以下、スタッフ掲載)

大阪方式(いわゆる「私立高校実質無償化制度」)の課題について

大阪府が独自に進めてきた私立高校の授業料実質無償化政策を指します。国の就学支援金制度の上乗せとして、大阪府が追加で補助を行うことで、一定の所得制限以内の世帯であれば「実質的に授業料負担なし」で私立高校に通えるようにする仕組みでした。

しかし、国が支援額の上限拡大や所得制限撤廃の方針を打ち出すことで、大阪方式の課題や矛盾が改めて露呈し、「制度の見直しが不可避」と言われています。
以下では、大阪方式の主な課題を解説します。


1. 私立高校の“参加・不参加”を巡る問題

1-1. 大阪方式に参加しない私立高校の存在

大阪方式では、大阪府独自の補助を受け取るために一定の要件を満たす必要があり、大阪府と私立高校側が協定を結ぶ形で制度に参加します。
ですが、この要件(「授業料の上限設定」や「特定の教育指標の達成」など)が学校運営を制約するといった理由で、参加しない私立学校も出ていました。

その結果、参加しない学校に通う世帯は大阪府独自の追加補助を受けられず、同じ所得水準でも「参加している学校かどうか」で保護者の負担格差が生じるという不公平が指摘されてきました。

1-2. 制度の目的との矛盾

「経済的理由で私立高校進学をあきらめる生徒をなくす」という大阪方式の目的に対して、補助の有無が学校の参加・不参加によって左右されてしまうのは矛盾をはらんでいます。
生徒・保護者が「授業料負担が少ないかどうか」で志望校を決定せざるを得ない、あるいは私学側も「参加しないと生徒募集で不利になるかもしれない」と懸念するなど、結果的に教育内容より補助の有無が優先されるという歪みをもたらしていました。


2. キャップ制(上限設定)の問題

2-1. キャップ制の概要

大阪方式では、私立高校の授業料に対して「キャップ(上限)」を設け、その範囲内であれば府が国の就学支援金に上乗せして補助を行う形をとってきました。
一方で、キャップを超える分の授業料は保護者負担となり、学校が教育の質や特色づくりのために授業料を高めに設定しても、実際にはその上限を超えた部分の補助は出ません。

2-2. キャップ制による学校の多様性・質の低下リスク

私学は公立と異なる教育理念や特色で差別化を図ることが期待されています。しかし、キャップ制により授業料を大幅に上げづらい状況が続くと、コストの高い先進的プログラムの導入や教育環境の充実が難しくなり、結果的に私学の多様性や質が損なわれるリスクがあります。また、学校側は寄付や人件費の削減などで対応せざるを得ず、教育の充実度に影響が出る可能性が常に指摘されてきました。

2-3. 国の上限拡大との整合性

国が2026年度以降、所得制限を撤廃した上で就学支援金の上限を「45万円程度」に引き上げる方向を打ち出しています。そうなると、大阪府が独自の厳しいキャップを維持し続ける意義が薄れ、制度自体に矛盾が生じることになります。国の支援金のみで平均的な私立高校の授業料がほぼカバーできるのであれば、わざわざ大阪府独自の要件に従うインセンティブが学校や保護者側に小さくなってしまうからです。


3. 制度全体の複雑化と公立・私立の提供体制への影響

3-1. 補助スキームの煩雑化

大阪方式は国の就学支援金制度への上乗せ補助という二段重ねの構造になっています。これは本来きめ細かな支援が可能になる一方で、制度がわかりにくく、保護者や学校の事務手続きが複雑になるデメリットがありました。
今回、国の支援がさらに充実することによって、大阪府独自の役割や上乗せの意義を明確化・整理する必要性が高まっています。

3-2. 公立高・私立高の提供体制そのものの再検討

大阪府では公立高校の統廃合と私立高校の実質無償化を一体的に進めてきた経緯があります。しかし国が私立高校無償化を拡大する場合、大阪府独自の公立高校再編戦略や受け皿確保の前提が大きく変わってきます。公私の役割分担やそれぞれの定員・カリキュラムなど、府全体で教育サービスをどう再構築するかが改めて問われることになるでしょう。


4. 大阪方式の主な課題まとめ

  • 参加を巡る不公平
    大阪方式に参加しない私立高校に通う生徒だけが追加補助を受けられず、保護者負担に差が出る。
  • キャップ制が生む教育の制約
    学校独自の特色づくりやコストの高いプログラム導入が難しくなり、私学の多様性が損なわれる可能性。
  • 国の拡充制度との整合性
    所得制限撤廃・上限拡大によって大阪方式の存在意義が揺らぎ、制度の矛盾が顕在化する。
  • 制度複雑化と教育計画の不透明感
    国と府の二重構造で、学校や保護者の手続き負担が大きく、制度の一本化や整理が求められる。
  • 公立・私立の役割再検討の必要性
    公立高の統廃合と私立高へのシフトを進める前提が変化し、教育サービス全体のバランスを再構築する必要。

5. 今後の見通し

国の新方針(2026年度からの所得制限撤廃、支給上限45万円程度への拡大)が本格化すれば、大阪方式の存在意義や運用は避けて通れない課題になります。
特にキャップ制の撤廃も含め、私立高校と大阪府の協定や公立校との整合性の見直しが急務となるでしょう。

また、大阪方式が前提としてきた公立高校の再編や私立高校の受け皿政策についても、国の支援拡充による環境変化を踏まえて再検討が必要です。
結果として、大阪方式が抱えてきた不公平やキャップ制の問題が一挙に表面化し、公私間の教育サービス全体をどう最適化していくのかという本質的テーマと向き合うことになると考えられます。

(アーカイブ:2025.02.18)