除染土で双葉町長見解 首都圏が行動で応じる時
社説:除染土で双葉町長見解 首都圏が行動で応じる時 | 毎日新聞
東京電力福島第1原発事故で生じた除染土について、原発が立地する福島県双葉町の伊沢史朗町長が、町内の公共事業での再利用を検討する意向を表明した。
除染土は、住宅や農地などの放射線量を下げるため、はぎ取られた土だ。双葉町と同県大熊町にまたがる「中間貯蔵施設」で保管され、総量は東京ドーム11杯分の約1400万立方メートルに及ぶ。
2045年3月までに処分を終えることが法律で定められているが、実現のめどは立っていない。
福島第1原発で作られた電気は首都圏などに供給されてきた。町長は「恩恵を享受していた地域が『関係ない』でいいのか考えるきっかけになれば」とも語っている。自らが受け入れる意向を示すことで国に対応を促す狙いがある。
除染土のうち、放射性物質の濃度が一定レベルを下回るものは、安全性には問題がないとの判断から道路や農地などに再利用することになっている。濃度が高いものは県外で最終処分される。
ただ、再利用は進んでいない。安全性などを確認する実証事業が、東京都新宿区や埼玉県所沢市などで計画されたが、いずれも住民らの反発で頓挫した。
国は、中間貯蔵施設の見学会や対話集会の開催などを通して理解を求めてきたという。
しかし、昨年11月の調査では、県外住民の7割超が最終処分について「内容を知らない」と答えた。自分の居住地域での再利用も「良いと思う」は約2割にとどまる。安全性について啓発する国の努力が足りないと言われても仕方あるまい。
環境省は2月、最終処分までの工程表を公表したが、処分場候補地の選定時期など肝心の項目は示されていない。
浅尾慶一郎環境相は町長の発言を受けて、「理解醸成を国の責務として行っていく」と述べた。国は、情報発信に総力を挙げ、復興に道筋を付ける責任を果たさなければならない。
まもなく東日本大震災と原発事故から14年を迎える
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(アーカイブ:2025.03.03)